わが国の住まいは明治以降の近代化の中で、大きく姿を変えてきた。ただ、巨視的に見れば、間取りは変わっても靴を脱いで住まいに入るというわが国独特の靴脱ぎの文化は、継承され続けている。一時期、靴のままの生活がもてはやされたこともあったが、そうした風潮は、直ぐに消え去った。個人的経験から言えば、靴を長い時間履き続けていた日は、疲れが特にひどい。普段は、机に向かうと直ぐに靴を脱ぎ、サンダルに履き替える。また、夏などは、靴下までも気持ちが悪く、ついつい靴下を脱いでしまう。それは、そうした靴文化に馴染めないという個人の感覚的な問題というよりも、やはり、夏はジメジメしていて靴や靴下を脱いだ方が気持ちがよいというわが国の気候風土に起因しているように思う。明治以降、わが国は急速に近代化し、生活スタイルは一変したし、住まいの中の諸設備も高度化した。しかし、地球温暖化の動きはあるにせよ、われわれを取り巻く基本的な気候風土という環境の形成要因は変わらない。夏は暑いし、冬は寒い。夏の暑さには、確かにクーラーの風もありかたいが、やはり、縁側で受けるそよ風は気持ちがいい。また、畳を素足で歩く感触もことさら夏は気持ちがいい。E・S・モースが記したわが国の住まいに見られる開放性という特徴は、近代以前のはるか昔、具体的には寝殿造以来、高温多湿という気候風土に対処するべく生み出された特徴といえる。住まいの間取りは、単に合理性、あるいは、好みといった観点ばかりではなく、こうした気候風土との戦いの中で生み出されたものでもあることを忘れてはならないし、そうした部分は、今後も変わらずに受け継いでいくべきものでもある。その意味で、環境という伝統を見直すことも、今後の課題といえるであろう。
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